エンドレスワールド


「エンドレスワールド」(マーブルコミックス)蛇龍どくろ 東京漫画社 2008/08/22


さて。待望のセカンドコミックですな。はい。いきなり一冊読みきりと来ました。凄いですね。
イラストは抜群でストーリーも、多分良いとなれば、言うことは無いです。
今回セカンドにしてこのボリューム、全く永さを感じさせなかった。普通に物語に引き込まれた。
イラストからその独自性が主張され、面白かった。まぁ薬物乱用を使ってきたので必然と言えば必然だし、そもそもヤクを取り上げるのは反則的な気もするが、逆に言えば彼女の世界観を表現しやすかったともいえる。
この点では外観至上主義たる私には特に問題ないことである。まぁ無いだろうが、ヤクを題材にし続けることは、流石に飽きる。



さて。大変好評なわけだが、物語的に言うと、要は、物語の核となる脇役で今は亡き薬中だった人物トシミツを巡るお話であると認知する。
おっさん峰山と主人公イツキがまず登場する。彼らは店主とバイトの関係であり、ちっこい喫茶店を経営していた。ここにはなんらBL的な要素は無い。
さて。或る時或るガキ3人が入店してきた。大変態度の悪い客で、店ひいては店主に関して罵詈雑言を言う始末であった。峰山に憧れて雇ってもらっていたイツキからすれば、侮辱以外の何者でもない。故に衝動的に制裁を加えてしまう。
そのときガキ等は知る。この人物がイツキであることを知る。

それから数日後。先日入店してきた悪態のガキ等のリーダー龍がイツキに会いにやってきた。
龍曰く、「あなたに憧れてたんです」
実は時間を遡った時、イツキは短髪イカツイ系の人物トシミツとつるんでいたのだ・・・


まぁこの辺から大体以降の物語は推測できるかと思う。
最後は現代に戻り(峰山と)イツキと龍で仲良くイツ龍お店を経営することになるのであるが、最後の最後、最終ページはトシミツしか知らない知られざる微笑ましきイラストによって締めくくられている。



さて。やはり今作で目を惹くのは、トシミツの薬中幻覚表現とそれを是とする環境設定である。蛇龍さんの魅力的なイラストとその幻覚の特異想像性がマッチしていたように思う。
っていうか読んでから「あ、これBLだった・・・」と思った。
彼女の作品は、どこか儚い。少しSFチックな要素があるように思う。
前作の「虹の残り香」は、読んだ後の余韻が大変心地良かった傑作である。
更に前作「冬を待つ季節」は個人的に好きにはなれないが、しかし私の意表を突いた感情表現であった。